有機農業研究家・弓山孝夫氏と北海道産乾燥ヒトデ

弓山孝夫

馬が喜ぶホタテ焼成カルシウム

20代の頃、私は家庭薬販売の営業をしていました。一生懸命勉強し営業成績を上げ全国表彰をされたあと、若いのに営業所を任される立場になりました。
自分で成績を上げるのとは違い、年上の人を使うというのは、50年以上前の年功序列の時代では大変なことでした。30歳を過ぎ薬の知識を活用して、農家に肥料を売る仕事を個人で始めました。最初の主要な肥料はカルシウムでホタテを焼成したものでした。普通の圧力粉砕した有機石灰(カルシウム分53%)と違い、カルシウム分97%なので用途も広がりました。

牧草などが良質に育つため、日高方面の馬の産地で多用されました。現在では畑や水田、牛のための牧草などに利用されています。旭川空港近くの牛舎では今でも多用途で使っていますが、道営旭川競馬が開催されていた時は、厩舎が飼葉(かいば=馬の餌)を買いに来ていました。馬が大喜びでその飼葉を食べるのです。他のものでは、そっぽを向いて食べないそうです。馬も違いが判ると言ってました。家庭菜園でも基本の資材です。

乾燥ヒトデとの出会い

40歳頃に北海道・猿払村の乾燥ヒトデと出会いました。
当時、猿払村漁協から依頼された農協が堆肥として扱っていました。オホーツクや宗谷の酪農地帯では牛ふん堆肥が主流のため、なかなか使われず、倉庫に山積みされていました。そこで私は譲っていただき堆肥として販売しました。

私は肥料販売で全道を回っていて、海岸線に行ったときに、埠頭で生ヒトデが捨てられていて、腐敗していてもハエ一匹止まっていないことを発見しました。
義兄が漁師をしていて、自宅の便所にヒトデを入れておくとウジ虫がわかないと言っていたことや、他の漁師の家もそうしていることを知り、農業での多面的利用を思い立ちました。生ヒトデは堆肥として使われていたので、乾燥ヒトデは土壌改良材として使い始めました。他の堆肥と違い搬送など扱いしやすかったこともあります。個人で販売していたため、農協などを通じて仕入れしていました。

酵素研究家との出会い

乾燥ヒトデを扱い初めて数年後、農家まわりをしていて、富良野方面で酵素研究家の宮本さんに出会いました。民間人なのでほとんど知られていない方です。
しかしながら彼の功績は現代農業に大きな役割を果たしたと信じています。
 一つはリンサンの使い方です。具体的な実践に基づいた資料は、1987年に農山漁村文化協会から出版された「リンサンを生かすリハーチン農法」(八田茂徳著)の中で紹介されています。その本は当時1200円でしたが、今では古書店で1万円ぐらいもします。もう一つは酵素です。宮本さんは車の運転をしなかったので、私の車で全道、東北まで行き、山野を歩き酵素を発見し、培養し、活用していました。彼の酵素は全国の酵素関係の会社に販売されていました。毎日のように「今日はどこへ行くの、連れて行って」と電話が来て、二人で農家の作物を見て回りました。
 生前の約束では「自分が酵素販売している顧客名簿や資料は弓山に託す」ということでしたが、脳卒中に倒れ亡くなりました。私はリンサンの生かし方と酵素の全てを学びました。

日常生活でも、例えば、パインナップルをもらうと中身を食べて、残った芯を利用してパイン酵素液を作ってしまいます。お風呂に入れてみようかとも思います。ライフワークの一つでもある酵素も原料は無料です。そこいらの水たまりにも酵素はあります。野菜にも、果物にも、何にでも酵素があります。暖かく(温度管理)やさしく見守り(よく混ぜて食事(酸素)を与える)、育ってきたら食事を変えるということです。赤ちゃんを育てるのと全く同じです。

乾燥ヒトデは農薬を不要とした実績が有り

30年ほど前から猿払村漁協から乾燥ヒトデを直接出してもらうようになりました。乾燥ヒトデの効果はすぐに現れました。それぞれ専業の農家から、問題となっていた害虫被害が止まったという連絡でした。すぐに全道の農家に広がりました。慣行栽培でも有機栽培でも、同じように効果を発揮します。畑だけでなくハウスの育苗におけるネズミやヘビなどの害獣の防止、倉庫などの種や成果物などの食害防止など、農家自身が活用を広げていきました。残念なことは乾燥ヒトデの生産量が決まっていることです。ここ数年は年間50トン前後で推移しています。小規模農家でも年0.5トンの消費量があり、大規模農家だと3トンから5トンの需要があります。注文をお断りしているのが現状です。
全国各地で農業以外での忌避剤としての活用も行われるようになりました。大手から個人まで乾燥ヒトデの生産を試みましたが、大半は実現しないまま今日に至ってます。ヒトデの量が減ってきていることもさることながら、工場に持ち込まれるまでの種々の壁があります。国や自治体の助成、漁協の体制がないと生産は困難です。ヒトデ自身が水産廃棄物なので、他の水産物残渣と一緒(混雑)の扱い(堆肥など)になると忌避剤になりません。猿払村漁協のようにホタテ漁だけで全国トップクラスの漁獲量があるから、それに伴うヒトデ専用の乾燥工場があるのです。
乾燥ヒトデの必要性はますます増大します。農業の世代交代、有機農業の推進、乾燥ヒトデはその入り口に重要な役割が果たせます。あらゆる害虫を忌避する乾燥ヒトデは農薬を不要とするので、家庭菜園や新規就農者にも有用です。

これらの他に堆肥ではコーン菌床、液肥ではフィッシュソリュブルなどがあります。さらに酵素を添加したりして効能を高めたりするものもあります。
これらに共通して言えることは、何かを生産したあとの残渣、即ち、産業廃棄物と言うことです。そのままだと処理にお金がかかる産業廃棄物でも、他に用途があれば立派な資源です。菌床はキノコなどを栽培する苗床で、昔は栽培後は捨てていたのです。どこにでも捨てるわけにもいかないので、空き地に自由に捨ててもらい喜ばれました。これを利用する農家は安価で上質の堆肥を利用できるわけです。フィッシュソリュウブルは水産加工場の廃棄物ですが、これも他の廃棄物と混ぜて堆肥を作ることも簡単に考えつくことですが、混ぜないで酵素を添加することで、ハウス栽培の液肥として高機能を発揮するわけです。牧場に肥料を納めに行って、糞を堆肥にしているのを見て、尿もばっ気したら上質の液肥になることを話してしまいます。

私はこういったことを誰にでも話し、指導までするので、私を真似して商売にする方も出てきました。それはそれで悪くないのですが、現在の農業政策やシステムでは農家の導入単価に上限があるので、なかなか普及しないと云うことになるのです。

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